「肉食で環境破壊?」 食卓から健康、生物多様性を考えるブループラネット賞、2人の受賞者からのメッセージ:朝日新聞デジタル
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この夏、マツタケが国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで新たに絶滅危惧種に指定されたことが話題になった。ニホンウナギやクロマグロなど、絶滅危惧種のニュースは近年食卓にも衝撃を与えている。
地球環境と私たちの暮らしや健康は、実は密接に関わっている。国連の報告によれば、野生動物由来の感染症は、森林環境の破壊や生物多様性の消失、気候変動などにより拡大しているとされる。新型コロナウイルス感染症の拡大もあり、地球環境問題は自分の身近な問題なのだと気づかされた人もいるだろう。
地球環境問題の解決に貢献した人・団体に贈られる「ブループラネット賞」(旭硝子財団)は、1992年の創設から今年で29回目を迎えた。 今年の受賞者は、肉食などの食習慣が健康や環境に与える影響を解明した米国のミネソタ大学教授のデイビッド・ティルマン氏と、IUCNの絶滅危惧種レッドリストの基準を開発した英国の元 IUCN
種の保存委員会議長のサイモン・スチュアート氏。両氏の研究テーマは、生物多様性や農業、食料生産など、SDGs(持続可能な開発目標)にも幅広く関わるものだ。受賞を記念しておこなわれた、識者による2人へのインタビューから、豊かな地球を未来に残すためにいま私たちにできることを探る。 健康的な食生活が、地球を健康にする ティルマン教授の受賞インタビュー
デイビッド・ティルマン教授は、農業と食習慣が健康と環境に与える影響を解明。「食習慣・健康・環境」の「トリレンマ」を地球規模の問題ととらえ、人間の健康にも、地球環境にもよい農業と食習慣への移行を提案している。 「『トリレンマ』とは3つの要因が絡み合い、互いに影響しあっている問題です。私たちの健康は食習慣の影響を受け、環境は農業の影響を受け、農業は私たちの食習慣に左右されます」
教授の共同研究チームは、食習慣が生活習慣病の罹患率、温室効果ガス排出量へ与える影響などを科学的に精査した。 「環境に最も悪い影響のある食物は、非加工赤肉と加工赤肉だと判明しました。これらは健康にも悪影響を与えます。そして、健康的な食物である果物、野菜、全粒穀類、ナッツなどは、環境に与える害も少ない食物です」
食生活を改めることで、自分自身の健康だけでなく地球の環境も改善できる、とティルマン教授は話す。 食物群の死亡率への影響と平均化した相対的な環境への影響 農業の環境への影響 ティルマン教授は、我々がこのまま食習慣も農業の方法も変えないままだと、大規模な気候変動が起こるだろうと警鐘を鳴らす。
「農業が、どう水質汚染を引き起こし、森林伐採や生物種の絶滅を起こしているのかを調べていきました。食物、健康、食習慣、エネルギーや土地利用政策などが全て密接に関わっています。多面的な視点が必要です」
事実、農業による影響は広がり続けている。教授によれば、環境汚染につながる窒素肥料の使用量は、1961年には世界全体で約1千万トンだったが、現在は13倍の約1億3千万トン。農地は地上の約40%を占めるが、農業は工業に比べて規制が進んでいない分、実は地球に大きな影響を与えているという。
窒素肥料や殺虫剤の使い方も含め、環境への負荷を最小限に抑えて収穫量を増やす。単一品種だけを栽培するのではなく多様な作物を一緒に栽培し、収穫量を増やす。そういった「持続可能な集約生産」の実現と同時に、大切なことは一人ひとりの食習慣の見直しだ。
「80億近い人口の一人ひとりの毎日の意思決定が関係してきます。私たちがすべきことは、まず自分にとって健康なものを食べること。また環境にも良いものを選ぶことです。肉食中心の食習慣から、魚、鶏肉、そして果物や野菜が中心の食習慣に変えることで、健康的な食生活を送りながら世界も助けられるのです」
生態系の中でそれぞれの種には果たす役割があり、ある種が消滅すると、その種が担当していた仕事は停滞して、生態系の機能に支障が生じる。 人間は環境に大きな影響を与えているが、救いもある、と教授は語る。それは人間が「知識」を持っているからだという。
「人間は今、生き方を変えて、地球が機能するために必要な他の種を残し、暮らしやすい環境の地球を次世代に残す必要性を理解しています。この現状に知識をもって対処できるのです」 受賞者紹介動画 ディビッド・ティルマン教授 広がるレッドリストの役割 スチュアート博士の受賞インタビュー
もう1人の受賞者のサイモン・スチュアート博士は、IUCNレッドリストのカテゴリーと定量的な基準の開発を主導。また、世界両生類アセスメントを立ち上げて、両生類の世界的な保護活動にも尽力している。
インタビューでまず博士が語ったのは、レッドリストが持つ意味。1996年のレッドリストから採用された定量的な基準によって、従来の絶滅リスク評価法にあった主観性を払拭し、科学的な根拠に基づいて、動物、植物、菌類の幅広い種を評価できるようになった。 「1990年代以降、多くの国でレッドリストの作成が始まり、各国が絶滅危惧種に責任を持つための第一歩となりました」
そうした定量的な基準を作るプロセスで最も苦労した点は、「科学的なことではなく、新しいシステムへの抵抗でした」と博士は話す。 レッドリストは誰にとってもわかりやすいものとなり、絶滅リスクを客観的な根拠に基づいて評価し、生物多様性の変化を見るための物差しとして、SDGsの指標や、金融機関が投資をする際の指針など、活用の幅が広がっている。
IUCNではこれまで行ってきた保全活動の効果、回復の可能性を評価するための「種のグリーンステイタス」も開発中だという。絶滅のリスクを評価するだけにとどまらず、「レッド」から「グリーン」へと一歩先を見つめている。 両生類の保護に、資金が必要
また、世界で初めての大規模な両生類の生息調査「世界両生類アセスメント」では、両生類が脊椎動物の中で最も危機に瀕したグループで、鳥類や哺乳類、爬虫類や魚類よりも絶滅に近いということがわかった。
「両生類は約40%の種が絶滅の危機に瀕していて、数百の種で不可解な減少が発生していました。当時は原因がわかっていませんでしたが、今では真菌による伝染病、ツボカビ症によるものだと判明しています」 こうした結果は2004年に発表され、世間から大きな注目を浴びたが、支援は十分ではなかったという。
「両生類の状況は日に日に悪くなってきています。ツボカビ症もまだ広がっています。この病気の新型はヨーロッパサンショウウオで深刻です」 両生類を現地で保護している団体、特に熱帯地域の団体への支援や、両生類のレッドリストを最新のものにすることなどが早急に必要で、そのためには多額の資金が必要だと、博士は指摘する。 受賞者紹介動画 サイモン・スチュアート博士
小さなことを毎日、大きな変化に/ 希望と勇気を持って 変化を起こそう インタビューの最後に、受賞者の2人からは次世代を担う若者たちへのメッセージが贈られた。 「現代のように豊かで満たされた生活を、未来の世代に残せるでしょうか?
私たちにできる簡単で大切なことがあります。体と環境に良い食べ物を選ぶこと。調理法を探り、楽しんでください。小さなことでも、80億人が行えば世界的な影響をもたらせます。小さなことを毎日行うことが、大きな変化につながります」(ティルマン教授)
「希望を持つことが何より大事です。うまくいかないという人の言葉に耳を貸す必要はありません。一人で孤立せず、コミュニティの一員として取り組みましょう。勇気を持ち、科学の力を活用し、自分の中にある情熱を使って、自分のまわりに変化を起こしてください。あなたならできるはずです」(スチュアート博士)
今年はコロナウイルス感染症の影響で、ブループラネット賞の受賞者の来日や会場での表彰式典、記念講演会が中止になった。旭硝子財団ではその代替として、「2020年ブループラネット賞表彰特設サイトhttps://www.af-info.or.jp/blueplanet/special2020/」を開設。例年の式典の流れに沿って、各界からの祝辞や、この記事でも概要を紹介した受賞者2人の「特別インタビュー動画」など、豊富なコンテンツを公開している。
2人をはじめ、歴代の受賞者の取り組みやメッセージから、私たちの暮らしを見つめ直すヒントを探してみてほしい。
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